風炉の材質は唐銅・土・真鍮・鉄・板・陶磁器などに分かれますが、いずれの場合も使用後にはまず底取で灰をあげ、その後に汚れを拭きとるようにします。土風炉の場合はぬるま湯で軽く湿らせた布で汚れをとりますが、主に人間の手がふれる外側と縁回りの黒いところを拭くようにし、本体の内側はなるべく拭かないよう注意する必要があります。金属製のものはかまわないのですが、土風炉の場合、釉のかかりが少なく素焼の状態に近い内側は濡れると染みるため、なるべく拭かないようにするのです。汚れをとる布は、茶道具全般に言えることですが、目の細かい柔らかなものを使用します。
風炉に残ってしまった灰は、小さな羽箒などを使い、できるだけきれいにとり除くようにします。灰が残ったままだとそこから汚れが出てきたり、サビついたりしますので、なるべく隅々まできれいにしましょう。灰を残さないことが、風炉のより良い保存につながります。
ただ、やつれ風炉の場合などは、荒れている鉄の地肌の間に灰がたまり、簡単にはとれなくなっているものです。この場合他の風炉のように灰を拭きとるわけにはいきませんので、羽箒で軽く掃くか、ゴミなどは乾いた布で押さえるようにとり除きます。それでも、細かな隙間に溜まっている灰を完全にとるのは難しいのですが、少しでも灰や汚れをとるための一つの手段として、机上用の小型掃除機で吸いとってやるという方法があります。足のへこみに溜まった灰などは特にサビの原因になりますので念入りにとった方が良いのですが、傷つきやすいやつれ風炉にはあまり無造作なことはできませんので、掃除機を使用する場合にはあくまで軽く、デリケートに操作するようにしましょう。
また、釜と同じく、金属製の風炉などには釻の付いているものがあります。この釻が、風炉を仕舞うときに地肌に当たり傷を付けてしまうことがありますので注意が必要です。釻がはずれるものは、はずして別にし、布で包んで保管しますが、はずれていないものは包帯のような薄い布で釻を巻いて、地肌を保護した方が良いでしょう。
風炉は水を使わないので特別丁寧に乾かす必要はありませんが、多少は水分を含んでいることもあるので、念のため完全に乾かしてから仕舞うように気を付けましょう。また、熱をもったままの状態で仕舞ってはいけません。どの材質のものも、熱が冷めるまで待つように注意します。熱いままだと、風炉にも箱のためにも良くないからです。くれぐれも、自然な状態になるまで待つようにしましょう。
風炉の持ち運びは、手荒く扱うと割れてしまうことがあるので、静かに行わなければなりません。特に土風炉ややつれ風炉には注意が必要です。土風炉の場合、よく口の角に釜や五徳を当ててしまい欠けさせたりしますので、その周辺はモロくなっており特に注意が必要です。底の方を、下から持つようにします。釻が付いているものも、釻はなるべく持たないようにし、全体を抱えてやるような持ち方をした方が安全です。扱い方一つで茶道具は長持ちしますので、十分に注意しましょう。
風炉を蔵に仕舞うときは、重さがありますのでなるべく棚の上に置かないようにします。軸の場合とは正反対で、重い茶道具は上の方に置くのは危険なので、下の方に置くようにした方が良いでしょう。
その他にも細かな注意点はありますが、一番大切なことは、保管するときには風炉の中に灰を入れたままにしない、ということです。忙しいと、この手間をはぶいてしまいがちですが、風炉を長年に亘り大切にしようと思うのなら、手間を惜しんでいてはいけません。風炉の保存状態がまったく違ってきますし、灰のためにもその方が良いといえるからです。
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