茶入

 茶入には貴重なものが多く、古来から非常に大切にされてきました。戦国時代には、国ひとつと同じぐらいの価値があると見なされたものがあったほどで、それだけに意匠も魅力的なものが多く、また、良いものほど茶人達に大事にされてきました。

 唐物茶入などは古いものしかないわけで、名物茶入も多く、一般の茶会で実際に使用することはあまりありませんが、中には昔のお茶が入ったまま茶色くなって残っているものが見受けられます。より良い状態をたもつためには、なるべくそういう状況は避けるようにしなければなりません。お茶が残らないように、きれいに拭きとるようにしましょう。

 茶入を扱うときには、細心の注意が必要です。茶会で客として席入りし拝見を行うときなど、必要以上にさわることはやめるべきです。裾や底を拝見するためにはどうしても裏返さなければなりませんが、何百人もの人が拝見を行うことを考え、特に底に手をふれることは絶対にやめましょう。

 保存するときも、茶入ほど大事にされてきた茶道具はありません。箱があるのにわざわざ挽家に入れ、もう一度箱に入れる。また、何種もの仕覆や、牙蓋が三つ以上付随したものもあります。何もかも一緒に入れるのではなく、茶入は茶入、蓋は蓋、仕覆は仕覆と独立した箱があり、最終的に鎧櫃のような大きな箱に入れられることさえあるのです。これは代々所持された方の、茶入を愛する心の強さを物語っています。

 茶入を仕舞うときにはまず、柔らかい紙か布などで汚れを拭きとります。ティッシュ・ペーパーの中には油気を含むものがありますが、そのような場合は使用しない方が無難です。この頃は水屋道具の中に絹のような繊細な裂がありますので、それを使用するのが良いでしょう。逆さにしても斜めにしてもかまいませんが、和物にしても島物にしても、扱い方には大変な気苦労があります。拭くでもなく、掃くでもないといった掃除の仕方を心懸けましょう。

 外側を拭いたら、今度は中をきれいにしますが、隅々までお茶を取り除くのは、意外に難しいものです。茶掃箱の中の小さな羽箒を使用するか、他の方法としては柔らかい紙や裂を入れてぐるぐる回す、耳掻の先のぼんぼりを利用する、などが考えられます。指を直接入れてこねまわすことは、絶対にやめましょう。茶入は非常にもモロいからです。

 また、茶入の仕覆に関しては古いものは大事に荘り、実際には新しいものを新調して使用するのが良いでしょう。

 普段お稽古に使う茶入や新しく購入されたものなども、基本的には古いものと同様です。茶入はお茶を入れるためのものであり、お湯は使いませんので、使用後は念入りにお茶を取り除くことに気をつければ良いでしょう。また、水の中につけることは絶対にやめましょう。外側の汚れは、から拭きをすれば良いのです。

 茶入を保管する場合には、乾燥剤など入れず、そのままの状態で仕舞えば良いでしょう。湿気はあまり心配しなくて良く、何も入れる必要はありません。蔵の中での置き場所は、棚の上で落ちにくい所などが適切です。足もとには重い物を置き、茶入のようにモロく小さなものは、上の方に置いた方が良いのです。

 とにかく、茶入につきましては、丁寧に扱うということです。くれぐれも、汚れを拭くときには強くこするなどの無理をしないようにしましょう。口造りの回りは特にモロく、要注意です。すでにふれたように、指をつっこむこともやめましょう。茶入には昔から大事にされ、数寄者の思い入れがこめられた、時代の歴史を背負ってきたものもあるということを、忘れずにいてください。




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